フランク・ロイド・ライト邸は1889年、キャサリン・トビンとの結婚を機に設計され、家族が増えるにつれ増築を繰り返しました。ライトは1909年まで、20年の間この地に住み、数々の設計を手がけました。深いひさしや低い屋根の水平を強調することによって、アメリカの大平原を彷彿とさせるロイドの代表的な建築様式、プレーリースタイル(prairie style)はこの時期に確立されました。
左手の八角形の建物がスタジオで、右手の三角屋根が自宅建物です。
自宅には、FRANK LLOYD WRIGHT ARCHITECT と書かれた額縁付きの石を掘った表札があります。家族の食堂は、長いテーブルを挟んで、覗かれない高さの窓に囲まれた空間に、ハイバックチェアの背もたれがつくる親密な空間と、その上の透かし彫りの天井照明がこじんまりとした家族の空間をつくっています。
ライトとキャサリンの間には6人の子どもがいました。壁面に描かれているのは神のようなもので、the story of the Fisherman and the Genie from The Arabian Nightsを基にしているそうです。アラビアンナイトの「漁師と魔人」の話は、ある漁師が壺を発見し、その壺に眠っていた魔人が現れ、その魔人に殺されそうになるも、頭を使って乗り切ったーーという話ですが、ライトはよくその話を子どもたちに聞かせていたそうです。
2階の子供たちのためのプレイルームにも透かし彫りの天井照明があって、半円形の大きなシリンダー(ハーフチューブ)の空間になっています。この空間は天井が高く、体育館のような雰囲気もあります。子供たちが演劇をして遊ぶときに観客席になるスペースが壁画のある壁の反対側にあります。
ピアノが見えていますが、このピアノは階段の吹き抜けにはみ出してはめ込んでありました。演奏すると家が楽器となって。家中にピアノの音が響き渡ったと思います。
一階の居間の暖炉には暖かそうなソファーが置かれ、アルコーブになっています。このファイアプレイスは、お客様をもてなす空間になっています。暖炉の上の棚には、「TRUTH IS LIFE 」
「GOOD FRIEND, AROVND THESE HEALTH-STONES SPEAK NO EVIL WORD OF ANY CREATIVE・」どういうことでしょうか「真実は人生」良い友達、これらの健康石はどんな創造物の悪の言葉も話さない。「真実」こそが人生の友である。ガイドの解説ではこのファイアプレイスは「床の間」のようなものだということなので、さしずめこの棚に描かれた言葉は、床の間の「軸」ということでしょう。ライトの座右の銘…なのかもしれません。
寝室を見た時に、エジプトを想起するエキゾチックな雰囲気を感じました。建築家の自邸なので、よそではできないことをいろいろやって見たのだと思いますが、増築に増築を重ねて、あらゆる様式を取り込んだ不思議な家です。