台湾大学社会科学部棟 2013

Architecture

伊東豊雄の作品です。もっとも詳細の解説は、作者自身による、2015年に「東西アスファルト事業協同組合」で行われた講演での自作解説です。「東西アスファルト事業協同組合」は定期的に建築家を招いて「私の建築手法」というタイトルの講演会を継続しています。講演会のタイトルは「明日の建築を考える」でした。

このとき、伊東豊雄は当時翌年に竣工を予定していた「台中メトロポリタン・オペラハウス(正式名称は〈台中国立歌劇院〉」の解説に続けて「台湾大学社会科学部棟」を取り上げて紹介しました。

伊東 豊雄 - 明日の建築を考える:東西アスファルト事業協同組合
東西アスファルト事業協同組合講演録より「私の建築手法」

建物は平屋の図書館棟と、八層の教室棟で構成されています。これらの建物の配置には、周辺のコンテクストを考慮することが問われました。そこで、長手が168メートルにおよぶ教室棟を外部道路に沿って配して四方が囲まれた中庭を完結させ、その中庭内に図書館棟を極力低く抑えて設けました。教室棟には、三層分の大きな吹き抜けが設けられており、その中央部には国際会議場があります。また、教室棟は、自然の空気が流通する環境がつくられています。教室や研究室の間にいくつかの吹き抜けを設けて国際会議場の入る大きな吹き抜けと繋げ、空気が上へと抜け、光が上から落ちてくる、なかなか快適な空間ができました。

https://www.tozai-as.or.jp/mytech/15/15-ito03.html

見学した時は、ちょうど屋上の防水のメンテナンスの準備をしている時でした。Google Mapでも未だ工事中に様子でした。「木の下で本を読むような図書館の空間をつくりたい」と考えていた伊東豊雄は 樹木のように上に広がりながら屋根となる円柱と、広がった緑(屋根)の隙間からこぼれ落ちる光をトップライトで表現して、トップライトではない屋根の部分は屋上緑化をしていましたが、防水のメンテナンスのために、屋上緑化は撤去されている状態でした。

図書館棟は、約50メートル四方の正方形の平面を持ち、屋根のパターンと柱の位置、また、周囲のランドスケープは、三つの中心から、放射状に広がっていく蓮の花のようなパターンが連続するアルゴリズムによって決定しました。それにより、図書館の柱には密なところと粗なところが繰り返し現れてきます。その柱の疎密が空間の違いを生み、自分の好きな場所を選んで本を読むことができる読書空間ができました。まるで木々の間から射す木漏れ日の下で本を読んでいるような体験ができます。

https://www.tozai-as.or.jp/mytech/15/15-ito03.html

高層棟の図書館には吹き抜けもあり、平屋の図書館とつながる部分には「防火区画」のシャッターが要求されたようですが、空間としては「いらないもの」として扱われていて好感が持てました。
書架も椅子も「竹」の集成材で制作されています。

放射状に配置された書架は、いつもコラボレーションしている家具デザイナーの藤江和子さんにお願いし、竹の集成材でつくっていただきました。台湾は竹細工が有名で、その職人さんがこの書架をつくってくれました。非常に強くてきれいな書架ができました。

https://www.tozai-as.or.jp/mytech/15/15-ito03.html

図書館は平屋の中だけでなく、隣接する高層棟の2階と連続した空間になっていて、高層棟の中には、お行儀よく書架の並ぶ開架書架空間もあります。階段ホールに鉄板でつくられた本を開いたようなベンチ(オブジェ)がありますが、このベンチの模型を、仙台でCM事務所「アトリエ海」を主宰している佐々木君吉さんの事務所で見ました。佐々木さんは「せんだいメヂィアテーク」の現場監督だった方です。

高層棟の3階は中間部が3層吹き抜けた外部空間になっています。ここから図書館の屋根が見えます。パッシブクーリングとしては、蒸暑地域では、日射遮蔽と通風促進が必須です。高層棟の中にも随所に吹き抜けが配置されていて風の抜ける空間になっています。

台中国立歌劇院
2015年の「東西アスファルト事業協同組合」で行われた講演会「私の建築手法」伊東豊雄の講演会のタイトルは「明日の建築を考える」でしたが、その講演会で最初に紹介されたのが「台中メトロポリタン・オペラハウス(正式名称は〈台中国立歌劇院〉、201...
タイトルとURLをコピーしました