「ホール・アース・カタログ」(whole earth catalogue)は、アメリカの編集者、スチュアート・ブランド (Stewart Brand) によって1968年に創刊され、継続的に発行された出版物です。発行元は、サンフランシスコの非営利団体ポートラ・インスティテュート。通常カタログ号は、年2回という刊行ペースでしたが、それとは別に「サプリメント」と呼ばれる冊子も発行されていました。
「ホール・アース・カタログ」は、数々の書籍や道具、情報がカテゴリー別に分類され、それらを紹介する複数の記事が併置される誌面構成でした。書籍としての物理的な質は、「金文字箔押黒表紙」ではありません。ただのペーパーバックで、NTT の「電話帳」のようなグレイドです。僕が保存している2冊は、価格も $5 というものでした。ボロボロに使われ、消えたカタログです。
「ホール・アース・カタログ」に掲載される品目の掲載基準は、「道具として有益であること」「自主教育に関連すること」「高品質、もしくは低価格であること」「郵送で容易に入手できること」の4点でした。掲載された商品は、カタログに挟み込みされた申込用紙を使用して、発売元から直接購入することもできました。
保存用に本を製本するときに、オリジナルの背表紙は切り取られてしまいます。「ホール・アース・カタログ」の製本は、裏表紙にポケットを付けて、そこにオリジナルの背表紙を保存しています。
「ホール・アース・カタログ」は、インターネットのなかった時代に、世界中の文化や自給的生活やパーソナル・コンピュータとエコロジーを知らしめる役割を果たし、1972年には全米図書賞を受賞します。しかし、スチュアート・ブランドは、カタログの葬式を行い資金を社会に還元するとして資金を平和活動家のフレッド・ムーアに託しました。フレッド・ムーアは、ホームブルー・コンピュータ・クラブをつくり、クラブからアップル・コンピュータが誕生、自分が懸命に作ったプログラムをクラブで共有されたビル・ゲイツはコピーの不条理さを訴えました。
ブランドは1980年代には、「ホール・アース・ソフウェア・カタログ」を発行、現在(?未来?)のコンピュータネットワーク社会の縮図のような研究を行っていた MITメディアラボを取材した「メディアラボ」を発行しました。スチュアート・ブランドは、後に、「インターネットがなかったから、『ホール・アース・カタログ』を作ったんだ。」と言っています。
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