ヘーリット・トーマス・リートフェルトは、オランダのユトレヒト生まれの建築家で、家具デザイナーです。1900年代前半にオランダで登場した新しい近代建築運動「デ・ステイル」の中心的な人物でしたが、あくまで手作業を尊重したクラフツマンシップをもって作品を作り続けた人物です。
「赤と青の椅子(レッドアンドブルーチェア)」は代表的建築作品のシュレーダー邸を椅子にそのまま椅子に置き変えたようなデザインですが、「赤と青の椅子」のほうが、シュレーダー邸よりも先に発表されていました。「デ・ステイル」で活動を共にしたモンドリアンのネオプラスチック絵画のスタイルを受け継ぎ、幾何学的な造形との見事なまでの調和を生み出している歴史的、芸術的価値のある逸品だと評されています。
「赤と青の椅子」は、1917年にリートフェルトによって基本形が設計されました。この椅子はブナの木でできていて、1923年まで塗装されていなかったようです(リートフェルト設計のシュレーダー邸は1924年に竣工)。塗装されていなかった…という話が、なぜわかったかというと、フィリップ・ジョンソンがMoMAに椅子のコレクションを収めた時にそう書いてあったそうです。そのため、実際には、あの特徴的な色がいつ塗られたのかは定かではありません。リートフェルトは、椅子の足の部分を黒く塗っています。これは、シュレーダー邸の2階に設置した時に、シュレーダー邸の黒い床と同化することをめざしたそうです。つまり、下部が黒で同化することで、端部の黄色、座面の青、背もたれの赤の部分がまるで浮いて見えるような効果を意図したと言われています。なるほど、そう考えるとレッドアンドブルーチェアの色の仕組みもわかりますし、単独ではなくシュレーダー邸と一体のデザインだったのかもしれません。
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